食乱 番外編 農薬類 慢性毒性も強い 園芸、街路樹用殺虫剤 身近に同じ成分
中国製ギョーザ中毒事件で被害者は、原因となった有機リン系殺虫剤「メタミドホス」を摂取後、すぐに体調を崩した。だが農薬類は急性毒性だけではなく、微量でも長期間体内に取り込むことで健康被害が起こる慢性毒性もある。農薬の毒性についてあらためてまとめた。 (鈴木久美子)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2008020702085782.html
問題のギョーザを介してメタミドホスを摂取した人は、激しい嘔吐(おうと)や下痢などの症状を起こした。同薬剤の特徴は、メルカプタン臭という硫黄やタマネギの腐ったようなにおいがすること。こうしたにおいがする食品があったら注意が必要だ。五日には同じ有機リン系殺虫剤のジクロルボス検出も明らかになった。
今回は大量摂取とみられる急性中毒だが、「食品の残留農薬は、毒性の強弱に関係なくアレルギー症状を促進させる」とアトピーやアレルギーの電話相談などをしているNPO法人「アトピッ子地球の子ネットワーク」(東京)の赤城智美事務局長は話す。基準値以下であっても、残留農薬や食品添加物など化学物質が、アレルギー症状を起こす引き金になるという。
化学農薬が本格導入されたのは戦後からだ。中でも有機リン系の殺虫剤は毒性の分解が比較的速いことから、一九五〇年代に入り、ディルドリンなど残留しやすい有機塩素系の殺虫剤に代わって、広く使用されるようになった。
農薬の摂取というと農産物への残留に関心がいくが、それだけではない。市民団体「化学物質問題市民研究会」(東京)の安間節子事務局長は、「農業だけでなく、家庭用やガーデニング用、街路樹やビルの殺虫剤など、身の回りにも同じ有効成分が使われているものが入り込んでいる。身近に吸い込む危険があるのに、その毒性は長年見過ごされてきた」と警告する。
農地でも散布された農薬は拡散する。農林水産省は、散布後の農薬の周辺住民への拡散状況を調査している。
有機リン化合物はコリンエステラーゼ酵素を阻害し急性毒性を示すことは以前から知られていた。だが、微量でも長期間摂取することで、さまざまな酵素の働きも阻害され、脳機能に影響が出て精神や神経などの異常を引き起こす慢性毒性があることが二〇〇二年、医師や専門家のグループの研究で報告された。
症状を示すかどうかは個人差があり、症状も倦怠(けんたい)感や頭痛、視力の低下、うつ的な症状、記憶力の低下など多岐にわたる。化学物質過敏症やシックハウス症候群の患者は反応しやすいといわれる。
同グループ主任研究員を務めた石川哲・北里大名誉教授(中毒学)は「農薬の歴史は、人命とひきかえの歴史。今でも急性毒性しかないという認識が根強いが、とんでもないことだ」と話す。また「いったん急性毒性の症状が収まっても、同性質の殺虫剤に接触すると、うつや、気持ちが高ぶるなどの神経症状が出ることもある」とも指摘。早く気づけば治療できるといい「今回の被害者の健康状態をフォローしていくことが重要だ」と石川さんは話す。
農薬工業会は「農薬は厳しい安全審査を経ており、決められた通りに使用されていれば問題はない」との姿勢を示すが、「胎児や子どもの将来にわたる影響や、複数の化学物質が使われることの影響は十分に評価されていない」と「農薬毒性の事典」(三省堂)の著者の一人、環境研究家の河村宏さんは懸念する。
「シロアリ駆除剤など法的規制の不十分なものもまだある。個人でも身の回りから一つ一つ減らして自衛していくしかない」
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