伝統製法で無添加の食
ぴかぴかに光った釜から、かつお節を煮詰めた湯気が立ち上り、奥では次々とだし汁がパック詰めされる。二〇〇五年、加西市内に新設されたマエカワテイストの加西工場。食品衛生管理プログラム(HACCP)に加え、食品の安全性が生産システムなどで保証されている企業に与えられる世界標準規格ISO22000を取得している。県内での取得企業はまだ数社。「大手も見学に訪れる」と社長の前川隆嗣(54)は胸を張る。
http://www.kobe-np.co.jp/rensai/migake/164.html
安全や味へのこだわりは生産システムだけではない。化学調味料を使わない無添加や有機加工食品の開発も一九九〇年から進めてきた。
今でこそ、消費者の「食の安全」への意識が高まりつつある。しかし、開発当初は、化学調味料の全盛時代。濃縮だしは「化学調味料で濃度を高めるのが当たり前だった」(前川)。しかし、食品企業として、体に優しい天然の味を伝えていくことの必要性を感じた。食品添加物を使わない濃縮だし作りへの挑戦が始まった。
素材は水と削りたてのかつお節、天日干しの塩だけ。一番の問題はだしの抽出方法と時間だった。コクを出すためにかつお節を大量に入れるとだしがのり状になってしまう。加熱しすぎて風味が飛んでしまったこともある。試行錯誤の日々が続いた。
ある日、前川は研究に使っていた鍋の底に、あめ状になっただしがこびりついているのを見つけた。なめると味が濃く、風味もある。約千三百年前に作られた味で、当時は唯一の動物性調味料だった「堅魚煎汁(かつおのいろり)」と同じだった。
開発過程で偶然に生まれた製法を前川は忠実に再現。さらに工夫を重ね二〇〇一年、一定の温度で十時間以上せんじ詰める煮釜作りの技術を確立し、無添加の「煮釜だし」を完成させた。
「濃い味を出すだけならば化学調味料で十分」と前川。「しかし、時間と手間をかけた昔の製法には、食べる人の体を考えた作り手の愛情が込められている」
煮釜だしをベースにした「天然だし」や「丼の素」なども開発。一部は〇一年に日本の有機JAS(農林規格)法の認定を受けたほか、EUや米国でも有機認証を取得した。
一般の商品と比べ割高になるが「消費者には少しずつ受け入れられつつある」と前川。「人の体や健康の源となる食を全国に広げたい」。前川の夢は広がる。
=敬称略
(桜井和雄)
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