私の体験から-変質した日本生活協同組合連合会
十数年前のこと、当時の私は、ある食品会社の品質管理担当として採用された。その会社は日本生活協同組合連合会(以下、日生恊と略す)と取引していた。日生協から、専任の品質管理担当者を配置するように指導されて、私が採用されたわけだった。
http://www.news.janjan.jp/living/0802/0802170962/1.php
私の仕事は、商品製造に協力してもらえる中小食品メーカーに対する、異物混入や変質などの防止と食品添加物表示の管理などを主目的とする品質管理指導であった。
当時の日生恊は、納入する商品に使用する原材料一つ一つについて詳細なデータを要求するとともに、製造方法についても詳しい情報を提供するように中小メーカーに求めていた。品質事故を起すと、改善のための具体的行動をとることを求めた。そして、改善の努力を認めると取引をつづけた。日生恊は、中小メーカーであっても育てるという姿勢があった。
また、製造工場に日生恊の担当バイヤーと同行したことや話し合ったことなどから、バイヤーであっても品質管理については、専任の品質管理担当者と同等の力量を持っていると感じた。
ところが、入社して2年目か3年目の頃、3つの事柄をきっかけとして、日生恊の姿勢に大きな変化があったことを感じた。
1つは、納入が決まる時点で、「この品質(特に色目と味・匂い)で良い」という日生恊の担当バイヤーの言葉のもとに納入を開始した商品にまつわる。このとき、日生恊に納める商品と同一製造ロットのサンプルが私の手元に届いた。このサンプルを見た私の正直な感想は、「エッ!! 品質にうるさい日生恊に納めるのに、こんな商品で良いのか?」というもので、少なくとも優れた品質とは言えるものではなかった。当時の私は営業ラインから外れた位置にいて、営業サイドが決めることに口を挟むことができる立場ではなかった。
案の定、その商品が生協組合員に販売されはじめて直ぐ、組合員から「匂いが悪い」との苦情が入ると、担当バイヤーは即座に販売を中止し、出荷した商品全部を回収した。ここまでは適切な処置だと思う。
直ちに、担当バイヤーが原因調査のために工場に立入り調査した。その内容は、営業担当がバイヤーに言ったセールストークも含めて私の耳にも届いた。詳しい内容は省くが、バイヤーは全責任は工場にあると断定した。そして、日生恊の販売価格にもとづく商品代金と回収費用の全額を弁償するように要求してきた。
では、営業担当は、なぜ、そのような商品を日生恊に売込んだのか、という疑問がわくのだが、担当営業が自分の成績を上げたい一心からのことであったとしか思えない。
もちろん、日生恊の担当バイヤーが「これで良い」と言ったとしても、リスクが高いと判断するならば、「売らない」と言って断ればよいのだから、メーカー側の責任がなくなるわけではない。だから、それ相応の弁償はしかたがないと思う。それにしても、担当バイヤーが「これで良い」と言った自らの責任は横において、責任をすべてメーカーに押し付ける姿勢には疑問を感じた。
あとの2つは、2つとも私が勤めた会社から企画提案したもので、すでに数年間の納入実績がある商品であった。1つはより低価格で納入する提案をした他の国内メーカーに、他の1つは途上国での生産に切り替えられた。2つとも、原材料や製造方法のすべての情報を日生恊に渡しているのだから、他メーカーは容易に同じ品質の商品を製造できるはずだ。
この3件の事例から、日生恊は中小メーカーを育てることを放棄し、利益重点主義に変わったと感じた。
私は商品の製造に協力してくれている中小メーカーに立入り調査をするとき、建物内に入る前に、建物周囲と敷地、さらにはその外側をも観察して、異物、汚染物、小動物、悪臭の有無や建物内への侵入経路の有無などを点検したものだ。
今回の事故は、十数年前の日生恊ならば起こりえなかったのではなかろうかと思う。確かに、今日このごろの組合員も低価格商品を求めているものと思う。しかし、安心安全の確保だけは絶対に守って欲しい。
(中西俊)
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