【青森からの挑戦】(中)ホタテ貝殻 エコ商品に変身
青森県を代表する主要産業・ホタテ産業。平成18年の生産量は7万2883トン、生産額は145億4200万円と、北海道に次いで全国2位を誇る。ただ、ホタテ貝を加工する際に廃棄物として排出される年間4~5万トンの貝殻だけは、加工業者にとって処理に苦慮する厄介者だった。
http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/aomori/080517/aom0805170257000-n1.htm
その厄介者者を商品に変えることに成功したのが青森エコサイクル産業協同組合(青森市、石川栄一理事長)だ。
まず着目したのは、積雪寒冷地で冬期間の路面凍結対策として散布されている凍結防止剤。塩素系の凍結防止剤は橋梁や路面を劣化させ、沿道の植物の枯死など環境への悪影響が懸念されている。
14年からホタテの貝殻を原料にした非塩素系凍結防止剤の開発に乗り出した。試験研究に当たっては、もう一つの青森の特産であるリンゴも使い、ジュースなどへの加工時に出るリンゴの搾りかすも使用。97%がカルシウムであるホタテの貝殻を砕いて1000度の高温で焼成し、リンゴ搾りかすを発酵・濾過(ろか)させて取り出した酢酸と反応させることで、塩素を含まない環境に優しい「酢酸カルシウム」ができた。
副工場長を兼ねる工藤史子主任研究員は「産廃処理しても金がかかる。野積みにしても苦情が寄せられる。加工業者が処理に困る厄介者を何とか有効利用したかった」と語る。
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試験結果を受け、実用化に取りかかった。リンゴの搾りかすの代わりに工業用酢酸を使い酢酸カルシウムを製造。15~17年度の3年間、県、青森市、青森空港管理事務所の協力を得て、散布車で実際に路面にまき、試験を行った。すると「従来の塩素系凍結防止剤と同等の性能が得られた」(工藤さん)。
昨年は同市が一冬に使用する凍結防止剤の3分の1に当たる約350トンを製造し、使用された。
効果が実証されたことで同社は、青森空港の滑走路でも散布できるよう、高い規格レベルまで品質を向上させるべく研究を進めている。スペースシャトルへの使用を想定して厳格な基準を定めている米航空宇宙局(NASA)の規格取得が目標だ。工藤さんは「もう少し性能評価をして、NASAの規格を取得したい」と話す。
ホタテの貝殻と工業用酢酸を原料にした非塩素系凍結防止剤の開発は国内で初めて。課題は従来の凍結防止剤に比べ、6~7割高という割高感と、ホタテの貝殻と同様、加工業者が処理に苦慮しているリンゴの搾りかすを実際に有効利用すること。「原油高の影響で工業用酢酸も3、4割コストが上がっている。リンゴ搾りかすのコストダウンと生産効率にめどが立てば、搾りかすも導入できるはず」と工藤さんはいう。
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ホタテ貝殻は焼成することによって水に溶け、水溶液は強アルカリ水になり、除菌、消臭効果が得られるという。こうした用途幅の広い貝殻焼成カルシウムの特性を利用し、他業者でもさまざまな商品を開発。同組合ではシックハウス症候群の原因であるホルムアルデヒドなどの吸着や、排水口、げた箱、玄関のにおい除去といった建築資材への応用、サプリメント、コンニャク、ラーメンのかん水など食品添加剤の開発にも力を入れている。
地球規模の環境問題が叫ばれる中、環境への負荷が少なく、安全・安心な商品が求められている。
「貝殻はさまざまな可能性を秘めている。どんどん用途を広げていきたい。そして私たちの研究を通して青森県を代表するホタテ産業に少しでも貢献できればうれしい。これからも環境に優しい社会に役立つ仕事をしていきたい」
工藤さんら同社の挑戦は続く。 (福田徳行)
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■青森エコサイクル産業協同組合
平成14年1月、青森市と外ケ浜町のホタテ加工業者が設立。組合員はホタテ加工業者や販売会社、流通会社など12社。出資金は9300万円。主な事業はホタテ貝殻の共同販売や再資源化に向けての研究開発、非塩素系凍結防止剤や土壌改良材などの製造。(電)017・764・2131。
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