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酵母と麹がヒット商品を生み出す

あのスーパードライを世に送り出した陰の主役

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090828/203647/

―― アサヒビールにとって、バイオは従業員の拡大につながるのか。

 大竹 実際、バイオは従業員の拡大に寄与する。当社の研究開発センターの人員は、2007年10月に約270人だったが、2009年8月には約315人まで増えた。

 当社にとって、バイオというのは、酵母、乳酸菌、麹という微生物で農作物を発酵させて、工業的に進化させることだ。


分散していた発酵の技術者を集約


アサヒビール研究開発戦略部の大竹康之部長

画像のクリックで拡大表示 当社はこれら微生物を利用する事業を拡大しており、人員の適切な配置を進めてきた。2007年10月に組織改定を行って、バイオ関連の研究者を、酒類、飲料、食品、新規事業に関連づける体制に変更した。

 具体的には、発酵の研究者が分散していたのを改めて4つの部署に集約した。それ以来、人材も増員してきた。バイオは事業の基礎だ。

 ―― バイオを利用した事業を拡大するというが、例えば、どういった事業なのか。

 大竹 大きな動きは、酵母エキスの事業拡大だ。2009年2月、三井物産と共同出資して『アドバンスト・イースト・テクノロジーズ・ジャパン』を設立した。

 欧州に天然調味料である酵母エキスを製造、販売する。世界最大の飼料用酵母製品メーカー、オルテック社がセルビアに保有するプラントに生産委託する。


狙うは「Eナンバーフリー」

 ―― なぜ酵母エキスという一見、地味な事業を海外で展開するのか。

 大竹 欧州では、大きな意義がある事業になってきそうだ。酵母エキスは天然調味料として使用されて、食品加工メーカーや飲食店などに卸売りしていく。その欧州では、「Eナンバーフリー」という言葉が一般の消費者に受け入れられつつある。

 Eナンバーというのは、食品添加物に付けられる分類番号のことで、欧州では加工食品の表示に書き入れなければならない。

 食品添加物を避けようとする傾向があって、Eナンバーが書かれていない、つまり食品添加物が含まれないEナンバーフリーの食品が好まれるようになっている。天然調味料はEナンバーフリーの食品にも使えるため需要が高まっている。

 そもそも天然調味料の市場は魅力的だ。年率5%ほどで伸びており、1500億円ほどに拡大している。日本で30億円から40億円の規模で事業を運営してきたが、さらに事業を拡大するには海外に出るしかない。アサヒビールにとっては大きな変化になる。


世界初のうまみ酵母を開発

 ―― 酵母エキスの事業強化に関係した人員増強はどのようなものか。

 大竹 天然調味料に適した高付加価値の酵母エキスを開発するために、研究者を5人増員した。

 食品や薬品を製造・販売するグループ会社のアサヒフードアンドヘルスケア社に調味料事業本部を新設し、調味料開発センターも発足させた。三井物産との共同出資会社の設立に向けて準備を着々と進めてきた。

 天然調味料に適した酵母を選抜して、うまみの元になるグルタミン酸をはじめとした成分を高濃度に含む酵母を作り出すことに世界で初めて成功した。だからこそ、欧州への事業拡大が後押しされた。

 セルビアにおいては、当社がオルテック社に対して技術を提供した。酵母エキスだけを製造するために、培養プロセスを一から構築したのは初めて。


スーパードライはバイオの勝利

 大竹 従来は、ビールの製造工程で出てくる副産物であるビール酵母をエキスにして販売していたが、副産物だけでは需要に対応しきれなくなっていた。だから、専用プラントを作ることになった。

 私もセルビアに行ってプラントの始動に立ち会った。少子高齢化の進む日本市場にとどまらず、世界市場に事業拡大しなければならないという思いを強くしている。

 ―― アサヒビールのほかの事業と比べると、他社との差別化が明確に見えるが。

 大竹 他社にない事業であることは間違いない。しかし、当社の事業はもともとバイオを応用したものと言える。酵母、乳酸菌、麹を利用して商品開発する点で共通している。

 例えば、アサヒビールにとって、バイオを利用した最大のヒット商品は何か。それは、1987年に発売した主力ビールの「スーパードライ」だろう。農産物を加工して、工業的に進化させた点では同じなのだ。

 多数の酵母の候補から、最適な菌株を選抜し、そこからビールを醸造したところ、消費者に広く受け入れられた。酵母、乳酸菌、麹という有用な食品微生物をどう活用するかという問題だ。


焼酎「かのか」を生んだ麹

 ―― 食品メーカーにとって、バイオはどう生かせると考えているか。

 大竹 バイオを研究開発に取り入れる視点としては3つある。

 素材の利用方法を深堀りするために利用すること。素材の応用カテゴリーを広げていくために利用すること。生産技術を革新するために利用すること。3点の研究のためにバイオ研究者は求められる。

 第1の素材の深堀りという意味では、酵母エキスの事業拡大はこの視点が重要だ。事業に必要な特長を持った酵母を作り出すためには欠かすことができない。

 第2の素材の応用カテゴリーを広げる観点としては、9月に発売する「パーフェクトアスタコラーゲン」は一例だ。乳酸菌の摂取とコラーゲン産生促進の効果を調べて、商品化したものだ。

 第3の生産技術の革新という観点では、麹に液体の中で様々な酵素を作れるように改良した事例がある。アサヒビールの焼酎「かのか」は、この麹の改良から生まれた商品だ。


付加価値を高め、コストダウンを図る

 ―― アサヒビールにとってバイオはどう意義づけられるか。

 大竹 食品の付加価値を高めること、あとコストダウンの2つの意義がある。

 付加価値というのは、健康の視点ばかりではなく、顧客に役立つ方向があれば開発を進める。食品の味を変えたり、食感を変えたりするのもバイオの役割だ。あらかじめ技術を作っておく発想が重要だ。

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