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【栃木発 元気印】丸昌産業 化学繊維のノウハウ生かし新分野開拓

 刃物で切れない糸、壁などに塗るだけで細菌を分解するコート剤など、これまでにない化学製品の開発で注目を集めている。経済産業省中小企業庁が選定する「2009年元気なモノ作り中小企業300社」にも選ばれた。

http://www.business-i.jp/news/venture-page/news/200910150014a.nwc

 古くから養蚕(ようさん)、繊維産業で栄えた栃木県佐野市で、より糸工場として1923年に創業。以来86年間、繊維一筋でやってきた。現在は、同市の本社工場のほか、群馬県館林市にも工場を持ち、長年培ってきたノウハウを生かしてさまざまな新製品の開発に注力している。

 ◆「刃物で切れない糸」

 中でも大きな柱となっているのは特殊繊維の開発、製造だ。耐熱繊維や蓄光糸、発熱繊維など数多く生み出してきた中、最近では「刃物で切れない糸」を開発した。この特殊な糸を使えば、柔らかくて軽いうえに丈夫な生地ができるとあって、防弾チョッキなどへの応用が期待されている。現在は、犯罪対策用などとして、中国からの問い合わせも多いという。

 こうした特殊繊維の開発が、会社の間口を広げている。「特殊糸を使うことで差別化を図れる」(小久保和浩社長)との狙いから、衣類の製造販売にも乗り出した。国内の大手商社や大手アパレルメーカーだけでなく、世界9カ国に取引先を持つ。その中には、パリコレクションに出展するような高級ブランドもあるという。

 もう一つの柱は、化学製品の開発だ。繊維開発は化学分野と密接に結びついており、これまでに蓄積してきたノウハウを活用している。中でも注目されているのは光触媒液「M-クリーン」だ。

 光触媒液は、太陽光などに当たると高い酸化力を発揮し、物体の表面に付着したカビや細菌といった有機物を、水と二酸化炭素(CO2)に分解して除去することができる。主成分の二酸化チタンは食品添加物にも使われている安全で安心な素材だという。

 すでに市場に出回っている光触媒液のほとんどが、紫外線量に比例して効果を発揮する。「M-クリーン」が他社製品と一線を画するのは、太陽光だけでなく、蛍光灯などの可視光線にも反応する点だ。このため、室内や日陰など、今まで利用が困難だった照度の低い場所でも適用することができ、用途が劇的に広がった。

 「あくまでも事業の中心は繊維」(小久保社長)というだけあって、もともとは洗濯しにくいウエディングドレスや着物の殺菌、保護のために開発されたものだった。だが、その用途は幅広く、現在では栃木県庁の壁面や横浜市営地下鉄の車体と車内、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH-IIロケット表面などに使われている。

 ◆積極的に環境配慮

 また、環境に配慮した取り組みにも積極的だ。現在、開発中なのは、ガラスに塗ると室内を夏は涼しく、冬は暖かくすることができるという化学製品。冷暖房が不要になるかもしれない、この製品は今年12月に東京ビッグサイトで開催される展示会「エコプロダクツ2009」に出展予定だ。

 さらに、販売している全商品をカーボンオフセットの対象としている。糸1本、もしくは化学製品100cc当たりをCO21キロと換算し、1キロごとに5円をインドの風力発電事業に出資する仕組みだ。

 小久保社長は「もともと繊維は自然のもの。人や環境に優しいものでなければ意味がない」と話す。今後も、環境に配慮した企業を目指し、人の役に立つ製品の開発を続けていく考えだ。(奥田翔子)

                   ◇

【会社概要】丸昌産業

 ▽本社=栃木県佐野市田島町171(TEL0283・22・1901)

 ▽設立=1983年(創業1923年)

 ▽資本金=1000万円

 ▽従業員=17人

 ▽事業内容=織物・編み物製品の製造・販売、特殊糸など新規素材・化学品の研究開発など

                 ■ □ ■

 ≪インタビュー 小久保和浩社長≫

 ■「他社には真似のできない技術」

 --光触媒液の開発に10年を要したようだ

 「液自体はすぐにできた。しかし、最初は塗った壁自体を分解してしまった。どうやって表面だけきれいにするかという部分が難しかった。今では、ストッキングやカシミヤのような繊細なものでも素材を損なわないようになった」

 --特殊繊維の開発を始めたきっかけは

 「会社を引き継いだとき、赤字からのスタートだった。利益を出そうと考えた結果が、他社にないような糸、つまり特殊糸の製造だった。さらに一般的な機械では、一般的なものしか作れないと思い、製造装置も開発した。もちろん、機械も企業秘密。取引先にも公開しない。他社にはまねができないという自負がある」

 --特許を取っていないが

 「徹底した情報管理を『秘密主義』と揶揄(やゆ)されることもあるが、独自の技術は自分たちの手で守りたい。以前は特許も申請したが、それには成分などの公開が必要。大企業はすぐに類似品を開発してしまう。中小企業が特許を守るのは難しいのが現状だ」

 --海外の取引先が多いが

 「国内市場は実績重視の傾向があり、良いものを開発しても実績がなければ使ってもらえない。とりわけ新製品への不信感が強い。一方、海外は、製品が良ければ認めてもらえる。日本の中小企業は高い技術力を持っているところが多い。もっと海外に目を向ければ技術力を生かせるのではないか」

 --今後の進め方は

 「光触媒液の開発を続ける。分解速度を10倍に上げ、カビや細菌の繁殖スピードを上回ることが目標。そうすれば、効果の持続性が高まり、画期的に用途が広がる。次に、より機能性を高めた特殊繊維の開発。繊維には『軽い、安い、強度がある』という利点があり、飛行機や自動車のボディーにも使われている。将来、金属に取って代わるかもしれない。こうした流れの中で『繊維ならどこにも負けない』という企業を目指す」

                   ◇

【プロフィル】小久保和浩

 こくぼ・かずひろ 群馬大学工学部卒業。大学では繊維工学を専攻。大阪の大手アパレル会社を経て、父の後を継ぎ、1996年から現職。46歳。栃木県佐野市出身。

                 ■ □ ■

 【イチ押し!】

 ■多彩な用途が魅力のコート剤

 丸昌産業が力を入れるのが、2002年に新規開発事業部を立ち上げて開発に乗り出したコート剤「M-クリーン」だ。現在では、室内用、外壁用、ガラス用などそれぞれの用途に合った製品ラインアップとなっている。

 光触媒液は有害物質やダニの死骸(しがい)まで分解するため、室内で使えば、シックハウス症候群やアレルギーの緩和にも効果が期待できるという。材料はすべて食品添加物とあって人に優しく、病院などでシーツや布団の除菌・消臭にも使える。

 高層ビルの窓ガラスに塗っておけば、汚れの付着を防げるため、長期的にはコスト減につながるという。

 現在は効果のデータを取りながら、試験的に採用している企業も少なくないが、数年の試用期間を経て、実際に契約に至るケースもあり、効果が実証されているといえそうだ。

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